NHKニュース

化学賞 鈴木章氏と根岸英一
ことしのノーベル化学賞の受賞者に、2種類の有機物を結合させる新しい化学反応の手法を発見し、医薬品など幅広い分野に貢献した北海道大学名誉教授の鈴木章さんとアメリカ・パデュー大学特別教授の根岸英一さんの2人の日本人が選ばれました。日本人がノーベル賞を受賞するのはこれで18人となり、化学賞は、おととしの下村脩さんに続いてあわせて7人となります。

鈴木章さんが北大で記者会見
ノーベル化学賞の受賞が決まった北海道大学名誉教授の鈴木章さんは、6日午後8時から札幌市にある北海道大学で記者会見を開いています。

根岸英一さん 受賞の喜び語る
ノーベル化学賞を受賞した根岸英一さんは、スウェーデンの記者会見場とつないで電話による会見を行いました。根岸さんは「受賞の知らせを受けたときは寝ていました。長い間、この賞を取ることを夢みてきたので、今は最高の気分です。結婚以来ずっと私を支えてくれた妻に受賞を最初に伝えました。妻もほんとうに幸せそうでした」と英語で受賞の喜びを語りました。そして、記者から賞金の使いみちを尋ねられると、「これからも研究を続けていきたいので、賞金は研究に使いたいと考えています」と話しました。

クロスカップリング」とは
今回、鈴木さんと根岸さんの受賞理由となった「クロスカップリング」は、構造の違う2種類の有機物をつなぐ化学反応で、医薬品や電子材料などの製造に利用されています。

“2人の研究 画期的なもの”
ノーベル化学賞を受賞した2人に詳しい東京大学北海道大学の名誉教授で、財団法人微生物化学研究会の柴崎正勝常務理事によりますと、2人の研究は、本来プラスとマイナスで結合する化学反応を、プラスとプラスのように反発する炭素どうしを結合させるという有機化学の合成の概念を覆す画期的なものだということで、この反応は、医薬品や液晶、材料などさまざまな分野に展開されているということです。柴崎さんは「2人の研究は、いつノーベル賞に選ばれてもおかしくないと思っていたがかなりの年月がたって、やっと受賞されたことに心からおめでとうと伝えたい」と話しています。

電子材料製造に欠かせず”
ノーベル化学賞の受賞が決まった根岸英一さんと親交のある京都大学の丸岡啓二教授は「受賞理由となった『パラジウム触媒によるクロスカップリング反応』は、今では、さまざまな病気の治療薬や液晶画面など、電子材料の製造に欠かせない技術となっている。根岸さんが学術的な理論を作り上げ、鈴木さんが工業的に使えるようにする研究成果を出した。根岸さんには国際学会でアドバイスをいただくなど、数年来のつきあいがあり、数か月前にも京都で食事した。70代の今も現役で研究を続けていますが、お元気で気さくに話をされ、日本料理をよく食べられていたのが印象に残っています」と話しています。

有機触媒 お家芸の分野”
今回、ノーベル賞の受賞が決まった2人と同じ、有機触媒が専門の理化学研究所の玉尾皓平基幹研究所長は「今回、受賞理由となった有機触媒は、日本では長年の蓄積があり、お家芸ともいえる分野だ。この分野の日本人の多くの若手研究者に勇気と元気、希望を与える成果だと思う。理科離れが言われているが、今回の受賞を多くの子どもたちにも知ってもらいたい」などと話していました。


Powered by RSS2LOG